僕に、恋してみたら?
スムーズに作業は進行していく。
「生地の調達が1番苦労しそうだと思ってたので、助かりました」
「なんか親がこういうの売ってて、融通きくんだって。今度お礼してあげて。アキナちゃんから感謝されたら喜ぶだろうから」
「も、もちろんです。感謝してもしきれません!」
先輩の人脈は、広そうだ。
もしも先輩の素行が悪ければ、こんな風に手は貸してもらえないんじゃないかな。
先輩は女の子にはちょっとだらしないかもしれないけれど、周りからの信頼は、厚いのだと思う。
「やってるかー?」
ガラッと引き戸をあけて入ってきたのは、柳くんだった。
「柳くん……!」
ユカリのテンションが急上昇する。
「差し入れ持ってきた」
手には、ビニール袋。
それから2リットルのペットボトル容器に入った飲料を数本と、紙コップのかたまりを取り出す。
「ありがとう! 気が利くじゃん」
ユカリが駆け寄って、ジュースをコップに注ぐのを手伝う。