僕に、恋してみたら?


綾瀬さんはさすが器用なだけあって、ささっと裁断を済ませてしまう。

特にわたしにできることはなさそうで、ゴミが出たらこまめに捨てに行くとか、抑えておいてと言われて生地を少しの間抑えておくとか、そのくらいしか手伝えることはなかった。


そんなこんなで、下校時刻になる頃には、なんと衣装は完成したのだった。


「よかった……!」

アキナが目を潤わせていう。

「頑張ったね! お疲れ様ぁあ!」

ユカリが、アキナに抱きつく。


「それじゃ、私はこれで」
綾瀬さんが、早々に帰っていく。


「なによアイツ」
ユカリの目がすわっている。

「まぁまぁ、衣装は完成したことだし許してやれって」

柳くんになだめられ、「柳くんが……そういうなら」と落ち着きをみせるユカリ。


帰り支度をすると、家庭科室から全員が出る。


「じゃあ、僕は先生に鍵を返してくるよ。劇、頑張ってね」

「先輩、ありがとうございました!」
「助かりましたっ」

アキナとサナ。

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