僕に、恋してみたら?


人と関わってこなかったわたしに、一生懸命なんて言葉は似合わない。


「目指せ美乳のために奮闘してるとこかな」

「そこですかぁ!?」

「それから、屋上で、劇の稽古してるとこ」


――!


「み、見てたんですか?」

「うん」


知らなかった。

誰もいないと思って油断して……大きな声を出してしまったのに。


「いたなら、声かけて下さいよ」

「可愛いアリスを眺めてたかったから」

「!」

「頑張ってるとこ、邪魔したくなかったんだ」

「……恥ずかしいです」


そうか。

だから先輩は、あの衣装がアリスだと気づいたんだ。

仮装喫茶でもファッションショーでもなく演劇だと知っていたんだ。


先輩は……わたしのこと、見てくれていたんだ。

わたしのこと、見守ってくれていたんだ――。



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