僕に、恋してみたら?
*
クラスメイトと解散し、桃惟と校舎の中まで移動してくる。
移動というよりは、むしろ避難だ。
7月下旬ということもあって、さすがにこの衣装で外にいるのは暑すぎた。
「涼しいねーっ」
人口密度が高い割には、普段より快適に思えるのは気のせいだろうか。
いつもなら、
「もっとエアコン効いてたらなぁ……」なんて思うところだけれど、そんなことはない。
ひょっとしたら、外部からのお客さんのために設定温度が低めにしてあるのかも。
すれ違う人の多くが、わたしたちを見ていく。
桃惟は言わずもがな男前な上に執事姿で超絶目立っていたし、わたしはアリスのままだから。
「今の人、カッコよすぎ!」
「あれ? アリスの子だよね」
「一緒にいるの、白ウサギじゃないんだ」
人から注目されるって……こんな感じなんだ。
わたしはこの服を脱げばいつも通りの日常に戻るけれど、桃惟は違う。
どんな姿でも、女の子たちからの視線を感じながら生活しているんだよね。
「桃惟、なにか食べた?」
「なにも食べてないよ。喫茶店で好きなものご馳走してあげるって言われたけど、あとで茉帆と食べようと思ったから断った」