僕に、恋してみたら?
なんの約束もしていなかったのに、こうして桃惟は、わたしの隣にいてくれる。
桃惟と一緒にいたい子、たくさんいると思うのに。
男の子の友達だって多そうだし。
なのに、当たり前のように、わたしといてくれる。
それが、どうしようもなく嬉しい。
これが彼女の特権……というやつなのだろうか。
「執事喫茶、もう手伝わなくていいの?」
そんなことを聞きながら、行ってしまうと寂しいなと思った。
「平気だよ」
「そうなの?」
ってことは、まだまだ一緒に見てまわれるんだ。
そう思うとニヤせずにはいられない。
「モーニングだけって約束で手伝ってたから。ほら、午前中は茉帆が忙しそうだったから、僕もひと働きしてきたんだ」
それって……
つまり、わたしのために調整してくれたの?
そんなサラッと言っているけれど、わたしはそれがすごく〝特別扱い〟に思えて照れてしまう。
嬉しい……。
「出店見てまわる?」
「うん!」
マップ(学祭パンフレット)によると、グラウンドの方で焼きそばとかホットドッグとか、いろんな食べ物が売っているみたい。
この暑い中で鉄板を前に調理する人たちは、体力の消耗がハンパじゃなさそうだ。
もちろん食べるこっちとしては、夏祭りみたいで楽しいけれど。
さすが、高校の学祭。中学の頃から比べると、随分とグレードアップしている。