僕に、恋してみたら?



「のど渇いちゃった。売店行ってくるよ。茉歩は、なにか欲しいものある?」
鞄から財布を取り出す。

「……ううん」

「そう? じゃあ適当に買ってくるね。飲めなきゃ冷蔵庫に入れておけばいいし」

視線を落とすと、ベッド横に小さな冷蔵庫が備え付けられていた。


「ありがとう」

「すぐ戻ってくるからね」

お姉ちゃんが、病室から出て行く。


ごめん。

お姉ちゃんの優しさが、今は、逆に辛い。


なにを隠しているの?

なにを誤魔化しているの?


どうしよう。

わたし、お姉ちゃんの顔、見たくない……。



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