僕に、恋してみたら?
立ちすくむわたしの前に、男が歩み寄ってくる。
思わず後ずさりするも、フェンスまでやってきて、逃げ場がなくなる。
「あーあ。いいところだったのに」
そのとき、目の前にいる男の顔を見上げ、ようやくハッキリと確認することができた。
ふわふわとした、やわらかそうな茶色い髪が風でなびいている。
重めの前髪から覗く目は、女の子みたいにパッチリと大きくて可愛い。
「……水上(みずかみ)先輩」
「あれ。君、僕のこと知ってるんだ」
知ってるもなにも。
あなた、超有名人じゃないですか……!