僕に、恋してみたら?


そうすれば、このモヤモヤも、綺麗さっぱりとなくなってしまうのに。


ガシャンと重い鉄の扉が閉まる音がして、ハッとした。


まさか。

あの日みたいに、いきなり先輩が現れるんじゃ……


「結城さん、ここにいたんだ」

「……!」


違った。水上先輩じゃ……なかった。

柳くんだ。


「よく来るの?」


黒髪が、さらさらと風になびいている。

第1ボタンまできっちりとしめられた学ラン。


なにもかも、あの人と違う。

……って、わたしは、なにを比べているんだろう。


「いつも昼休みいないと思ってたんだけど、屋上にいたんだ」

「いつも屋上ってわけじゃないけどね」


雨の日はひとけのない校舎とか、空き教室とか、あとは図書室とか。


「なんで結城さんって、一匹狼なの?」

「……へ?」

「人と話すの、苦手じゃないよね」

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