僕に、恋してみたら?


3年の水上 桃惟(とうい)のことを知らない生徒は、おそらくこの高校には、一人もいない。

入学して1ヶ月のあいだに、わたしがどれだけ水上先輩の噂を耳にしてきたことか。


来る者拒まず、去る者追わず。

長身、小顔とモデルさながらのルックス、甘いマスクの持ち主でいて、頭もいい。

……モテないわけがない。

この学校の、王子様的存在。

ただ1つ難点があるとすれば、この水上という先輩は、相当な女好きらしい。

泣かせた女は星の数ほどいる、なんてバカげた噂も聞いたことがある。


「わたしは、これで……」

先輩を押しのけて逃げようとするわたしの手首を、つかまれた。


「待ってよ」


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