僕に、恋してみたら?


逃げるように、屋上をあとにする。

勢いよく階段を降りていると、曲がり角で、人とぶつかった。


「危ないよ」

わたしを優しく受け止めてくれたのは……

「……どうして?」

水上先輩だった。


なんでこんなときに、会ってしまうの?


「来てたんだね。もう行っちゃうの?」

「先輩っ……」

「調子どう? 身体、まだ痛む?」

「…………」


あの日、自分が運んだんだって、言わないんですね。


「どうしたの、茉帆ちゃん」


ちょっとカッコつけすぎじゃないですか。

いくらチビでも、ここから保健室までは、重かったんじゃないですか?


「先輩……」

「なにがあったか、言える?」

「…………」

「ちゃんと、聞くから」


聞かないで下さい。

はやく、どこかへ行って下さい。

でなきゃ、わたし——。


「先輩と……」


おかしなこと、言っちゃいますよ?


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