僕に、恋してみたら?


「買い物行かない?」


意外だった。

お姉ちゃんから誘われたのは。

最近その手の誘いは全くといっていいほどなく、お姉ちゃんは休みの日は『友達と遊んでくる』といって出かけることが多い。

朝早くから出かけることもあれば、夜は22時すぎるまで帰って来なかったり。

お母さんはお姉ちゃんのことを信頼しきっていて、その辺は任せているみたいだけれど。


「え……眠い」

「クレープ奢ってあげるから」

「行く」

「……あんた、クレープ好きだねぇ」


お姉ちゃんと顔を合わすのは、気まずい。

昨日、水上先輩と――キスをしてしまったから。


お姉ちゃんは、水上先輩の元カレだ。

訳ありで別れたような雰囲気もある。

それを聞くに聞けないわたしはチキンだと思う。

姉妹だからといって全てを話し合えるとは限らないが、これまでは割となんでも話せる関係だった。

……ううん、違う。

わたしが、そう思っていただけだった。

わたしにもお姉ちゃんに言いにくいことがあるように、お姉ちゃんにもまた、言えないことがあったんだ。

友達と遊んでくるといって、水上先輩とのデートだったりしたんだきっと。

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