傍観者
1.批判者

視線

落ち葉舞う11月。薄暗い窓辺。
静まり返った教室でHRがはじまった。

「あ━━、全員席に着け━━━。」

担任の松本は、今日も馬鹿だ。

お前には誰が見えてるんだ。

……まぁ、松本にはこの後手厳しいセリフが飛ぶのだが。


「先生、どう見ても全員座っています3年生であるため
今月いっぱいで生徒会から卒業となる。

人気ありすぎて困る系の、
俺が関わりたくないランキング第一位の
女性である。


………ん?こちらを怪訝な顔で見ている。

どうしたのだろうか。

彼女の黒く澄んだ瞳に吸い込まれるように見つめられ、内心穏やかでは無かった。

教室の静寂さと彼女の真っ直ぐな視線が
刺さる。

苦手な人種に「見られている」
という事実が俺を早退させようとする。

(落ち着け、俺。奴は消さなくても……!!)




しかし、次の瞬間には何事も無かったかのように


「皆さん、お静かに。」


と、教室の空気を戻した。

俺の揺らぎも静かになっていた。



松本が口を開く前にHR終了を次げるチャイムが鳴り、生徒達は一斉に喋りだした。

いつもの通りとなってしまった松本は、
がっくりと項垂れながら教室を後にする。

俺はと言うと、

「あッ!紀田クゥ〜〜〜ン☆」


(げっ…………。毎日毎日懲りないな…)


「あ、吉川さん。どうかした?」

「紀田クン、今日の放課後空いてる?」


(昨日も聞いてきたなソレ)


「ごめんね、今日は用があるんだよね……
僕に何か用事でもあった?」

(面倒だからいつも聞いてなかったけど、
お前のそのウザさに免じて聞いてやるよ)


「そうなんだ…。大事な用でもないし、
大丈夫だよ!」


(じゃあ、予定聞くなよ)


「そっか、ごめんね。」

「う、ううん!へーきッ!」


(やっと会話終わった)

こうして、いつも通りの日常が始まる。
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