海の底に眠る祖国
「この度開催される第7次世界大戦、日本国も参加することが、閣議で決定されました」
300年間戦争をしていなかった日本の国会からその発言が出た時は、世論は荒れに荒れた。
憲法9条はどうするのだ。
1人参加させるだけで10億ドル、1150億円も出すのか、と。
「国民の皆さんも知っての通り、世界が日本を見る目は日に日に厳しくなっております。アジアの要となるはずの我が国が、世界情勢に関しては何の意見も述べずに300年間通してしまったからです」
「そんなの、日本は大体が悪天候で他国へ行くのも命がけの状況だったからだろうが!」
「大体、戦争を始める米国が悪いのではないか!」
「なんで平和に生きている俺たちを責めるんだ!」
怒号が激しく飛び交っていた。
その時までは、志乃は無関係な気分でいた。
殴り合いが始まった国会中継を見ながら、大変なことになったなぁ、なんて思っていたのだ。
運命が変わったのは一瞬だった。
ピンポンと軽いチャイムが鳴り、志乃が腰を上げた瞬間。
ガチャリとドアの鍵が勝手に開けられ、黒服の男たちがドカドカ入ってきた。
びっくりして口をつむげないでいる間に、志乃はあっさり捕まって車に押し込められた。
そのまま家に戻れることは2度となかった。