海の底に眠る祖国
『始めに扉を誰かが開けてから5分経ったらこの部屋は火の海になる。それじゃ、用意が出来た奴から扉へゴーだ!グッドラック!』
その瞬間、素早くまるで蛇のように皆が扉の中へするりと潜入した。
スパイ映画のように静かで迅速な動き。
だが、志乃はいつまでも感心していられる状況ではなかった。
5分だ。
5分で扉の先へ飛び込まなければ死ぬ。
人がほぼいなくなった広い空間に寂しげなアタッシュケースが1つ。
転がるようにそれに飛びつく。
手が震えてケースを開けるのも一苦労だ。
ようやく開けたら、中にはゴテッとした銃と弾丸。
恐る恐る持ち上げてみたが、重いし弾はどう詰めればいいのか分からない。
むしろアタッシュケースを武器にして殴る方が楽だ。
撲殺。
不穏な言葉が志乃の頭に浮かんだその時、静かな視線を感じた。
顔を上げる。
麦穂のような金色の髪と、海よりも明るい青い瞳が見えた。
誰だこの人は。
少なくとも白人で、ヨーロッパかアメリカか。
いや、アメリカの参加者は黒人が多かった気もする。
志乃はそんなことを考えていた。
目の前の男は2メートル近い長身で、少し怖かった。