海の底に眠る祖国
「お前、オランダの野郎に何そそのかした?」
「え?」
「自分を助けてくれれば、日本でオランダ移民を受け入れるとでも言ったのか?」
志乃は必死で首を振る。
何言ってんだこの子は。
だが、少年はチッと舌打ちするだけで銃を下ろしてはくれない。
両手を上げて無抵抗を示しても何の効果もない。
殺される、と思った時、ひょいと助け舟が出された。
「おい、チャイニーズ、うちの財布に銃を向けないでくれよ」
「……黙ってろピザデブ」
少年の眉間にシワがよる。
短く刈りそろえられた茶髪とあごひげ。
ルークと同じくらいであろう長身の男と、それより少し低めの青年が志乃と中国の少年を引き離した。
新たにやって来た2人のバッジはUSA。
「オランダを敵に回しても問題はないが、ルーク個人を敵に回すのは問題だな」
「分かってる」
ムスッとしたまま少年は銃を下げた。
志乃はどうすればいいのか3人の顔をあわあわ見つめる。
アメリカの2人は周囲を気にせず話し始める。