海の底に眠る祖国






「お前、オランダの野郎に何そそのかした?」

「え?」

「自分を助けてくれれば、日本でオランダ移民を受け入れるとでも言ったのか?」


志乃は必死で首を振る。
何言ってんだこの子は。

だが、少年はチッと舌打ちするだけで銃を下ろしてはくれない。
両手を上げて無抵抗を示しても何の効果もない。

殺される、と思った時、ひょいと助け舟が出された。


「おい、チャイニーズ、うちの財布に銃を向けないでくれよ」

「……黙ってろピザデブ」


少年の眉間にシワがよる。

短く刈りそろえられた茶髪とあごひげ。
ルークと同じくらいであろう長身の男と、それより少し低めの青年が志乃と中国の少年を引き離した。

新たにやって来た2人のバッジはUSA。


「オランダを敵に回しても問題はないが、ルーク個人を敵に回すのは問題だな」

「分かってる」


ムスッとしたまま少年は銃を下げた。

志乃はどうすればいいのか3人の顔をあわあわ見つめる。
アメリカの2人は周囲を気にせず話し始める。




< 34 / 41 >

この作品をシェア

pagetop