海の底に眠る祖国





志乃は目の前のアメリカ人の言葉を聞いてようやく気づいた。

そもそも、前提条件が違うのだ。
この人たちは勝ちに来てる。
国として、世界の覇権を取りたいのだ。

対する志乃は、「日本が戦争に参加したという事実を残せればいい」としか言われていない。
だから、勝ち負け以前に、半年間生き残ればいい、としか思ってなかった。

このことをどう伝えればいいか。

志乃はゆっくり口を開く。


「あの、私、ポイントいらないです」

「はぁ!?じゃあ日本はなんで参加してんだよ!?」


志乃の言葉に一番に食ってかかったのは中国のヤン少年だった。

眉間にしわをよせて、「気にくわない」という思いがありありと顔に浮かんでいる。


「とりあえず参加しとけばいいからって」

「とりあえず!?舐めてんのかお前ら!」


ギャアギャア騒ぐヤンを、ネロがまぁまぁと押さえつける。


「そうは言っても、負けたら勝った国にいいように使われるんだぜ。いいのか、日本はそれで」

「……さぁ?いいんじゃないでしょうか?その辺のことは私の知ったことじゃないので」


きっと上の人が考えてくれているのだろう。
志乃の父親とか、偉い人が。





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