海の底に眠る祖国
「お前、最下位でゴールしろ」
「えっ」
「ポイントいらねーんだろ。10億ドルをドブに捨てるなんて、さすがアメリカの財布だ。信念はなくても金だけは持ってんだな」
ヤン少年だった。
ムスリとした顔で、軽蔑したように見てくる。
その嫌味な言い方にさすがの志乃もイラッとした。
「中国だって金持ってるじゃん。人の努力を模倣して得たお金」
「あぁ?何百年前の話してんだよテメーは」
「パクリ大国のくせに」
「日本だってパクリだろ。餃子も炒飯もラーメンもうちが起源だ!」
「パクリディズニー!」
「あれはもう取り壊しただろうが!」
「やめろってお前ら」
ヒートアップするヤンと志乃の争いを残っていたブロンドの男が止めてくれた。
ちなみに彼はさっきまでめんどくさそうに煙草を吸っていた。
アジアの中核ともいえるこの二国の諍いなど、数百年前からずっと続けられてきたのだ。
アメリカの彼からすれば毛ほどにどうでもいいことだし、出てくる感想なんてよく飽きないなぁ、くらいだ。