愛述べる ~私の小説~
私。
今日も変わらない景色。外を見ると樹齢100年の桜の木からヒラヒラと花びらが散る。
待合室の窓から入ってくる風が心地よい。
もう、8時だ。きっと入学式は始まっている。
「心愛ちゃん。検査の時間だよ」
「うん」
検査室のドアを開けると毎回のように見るお馴染みの先生。そして、毎回のように言われる言葉。
「強い刺激を受けてみて」
これを聞くのは何回目だろうか。刺激なんてどこで受けろというのだろう。
「ねぇ、心愛ちゃん。学校に行ってみたら?今日入学式でしょ。明日から行ってみなよ。何か刺激になるかもよ。」
「え、やだよ」
学校なんてつまらない。私の居場所がない。
「制服もあるんでしょ?勿体ないよ。いってらっしゃい。」
父が念のために私が入学する学校の制服を買っていてくれた。
「わかったよ。」
渋々承知。半ば強制的に行く事になった。
なんだか憂鬱だ。
小学生の3年生から全然学校に行っていなかった。物凄くつまらない。
私はよく無表情だと言われる。その原因は全色盲にあるだろう。
全色盲は色が白黒にしか見えない、視力も悪くなる病気。世界にほんのひと握りしか存在しない。
私は生まれつき白黒にしか見えなかった。それが普通だと思っていたし、違和感もなかった。
でも、小学3年生の時友達が
「この色綺麗だね!」「ピンク可愛い」
と言っていた。私には白黒にしか見えなかったから
「それ、白だよ?」
と言ったら
「心愛ちゃん変なの」
と言われた。私はみんなとは違うのだと思った。
私はそのことがきっかけで学校に行くのをやめた。
それからずっと病院暮らし。
久々の学校だ。幼馴染みの2人は元気かな。
ガラガラ
「はい!席につく! 昨日はいなかったんだけど、西野心愛さんも一緒だから仲良くしてあげてね。」
「宜しくお願いします。」
私の席はマンガでよくある1番後の窓側の角。
窓からは桜が見える。桜を見るとなんだか懐かしい気持ちになった。
「ねぇ。西野さん」
「なに」
話しかけてきたのは、隣の席の青井岳だ。
とてもニコニコしていた。
「西野さんって何部に入るの?」
「なんにも入らないよ」
「俺ね!サッカー部に入る。サッカー選手になりたいんだ。」
と岳は輝いた目で話していた。私はなにも反応ができなかった。夢も希望もなかったから。
ただ、毎日を平凡に生きてきただけ。そんな輝いたものなど私は持っていなかった。
お昼休みになった。
「ココ!久しぶり!」
そう話しかけてきたのは私の幼馴染みであり、親友でもある菅野莉恋。
「よう。ココ!元気だったか?」
こっちは幼馴染みの村岡玲。厄介なやつ。
でも、相談に乗ってくれるときはいいやつだ。なんだかんだ優しい。
私は昔からこの2人以外に友達がいなかった。
それは無表情だから。一緒にいてもつまらないから。そして、病気だから。でも、この2人は昔からずっと一緒にいてくれる。私が会話に混ざらなくても、笑わなくても。私を一番に理解してくれている。だから、心地よいし、気を使わなくていいから好き。私の病気を知っても私への態度が変わらなかった2人は私の宝物。
「なぁ、腹減った。飯食おうぜ」
「そうだね。食べよう。心愛お弁当持ってきた?」
「うん。あるよ。」
「俺さ、サッカー部に入る!」
「いきなり何よ。あんたはサッカー以外に何も取り柄ないでしょ」
中学校の頃も3人でつるんでた。お弁当も。登下校も。
莉恋と玲は喋っている役。私は聞いてる役。
自然にそういう構成になっていたが、私はそれが一番いい。
「お前は何に入るんだよ」
「私はサッカー部のマネージャよ!」
「また、お前と一緒かよー。勘弁勘弁!」
「もう、今日はココと二人で帰る!」
「え、ひど!すいませんでしたー!チョコ上げるから!」
キーンコーンカーンコーン
「じゃ、ばいばい。二人とも頑張ってね」
「おう!」
「ありがとう!気をつけてね。一緒に帰れなくてごめんね。」
2人はもう、部活が始まるようだった。久しぶりに家に帰る。何ヶ月ぶりかな。きっと両親はいないだろう。
外は桜がひらひら舞っていた。
ガチャ。
「ただいま」
「あら、おかえり」
母がいた。母なんて呼びたくない。私が嫌いな人。玲子さん。
「夕ご飯作っておいたから温めて食べてね。」
「うん」
玲子さんは私の二人目の母親。本当の母親は病気でなくなってしまった。亡くなったあと、浮気相手だった玲子さんを家に連れてきた。
玲子さんにとって、私は邪魔な存在。
私も玲子さんの愛情など求めていなかった。
私は小学校2年生の時、母が病気で倒れた。
ガンだった。父は私が小学校に入ったばかりの頃に浮気をしていたらしい。家には全然帰ってこず、お金も玲子さんのために使っていた。だから、母は私のために働いてくれていた。病気はもう手遅れで母は私に
「自分を信じていきなさい。誰かを愛しなさい。」
そう、私に言い残し亡くなった。
私はこの意味がまだ、わからない。いつか分かるかな。
父と玲子さんは毎晩のように出かける。
昼間は仕事、夜は出掛けていった。
父は私に必要なものは与えてくれていたから、何不自由なく暮らせていた。診察代も。
私の病気の治療法はまだない。
今日もカレー。玲子さんはこれしか作らない。というか、作れない。
カレーを食べる気分じゃあないからもう寝ようかな。
待合室の窓から入ってくる風が心地よい。
もう、8時だ。きっと入学式は始まっている。
「心愛ちゃん。検査の時間だよ」
「うん」
検査室のドアを開けると毎回のように見るお馴染みの先生。そして、毎回のように言われる言葉。
「強い刺激を受けてみて」
これを聞くのは何回目だろうか。刺激なんてどこで受けろというのだろう。
「ねぇ、心愛ちゃん。学校に行ってみたら?今日入学式でしょ。明日から行ってみなよ。何か刺激になるかもよ。」
「え、やだよ」
学校なんてつまらない。私の居場所がない。
「制服もあるんでしょ?勿体ないよ。いってらっしゃい。」
父が念のために私が入学する学校の制服を買っていてくれた。
「わかったよ。」
渋々承知。半ば強制的に行く事になった。
なんだか憂鬱だ。
小学生の3年生から全然学校に行っていなかった。物凄くつまらない。
私はよく無表情だと言われる。その原因は全色盲にあるだろう。
全色盲は色が白黒にしか見えない、視力も悪くなる病気。世界にほんのひと握りしか存在しない。
私は生まれつき白黒にしか見えなかった。それが普通だと思っていたし、違和感もなかった。
でも、小学3年生の時友達が
「この色綺麗だね!」「ピンク可愛い」
と言っていた。私には白黒にしか見えなかったから
「それ、白だよ?」
と言ったら
「心愛ちゃん変なの」
と言われた。私はみんなとは違うのだと思った。
私はそのことがきっかけで学校に行くのをやめた。
それからずっと病院暮らし。
久々の学校だ。幼馴染みの2人は元気かな。
ガラガラ
「はい!席につく! 昨日はいなかったんだけど、西野心愛さんも一緒だから仲良くしてあげてね。」
「宜しくお願いします。」
私の席はマンガでよくある1番後の窓側の角。
窓からは桜が見える。桜を見るとなんだか懐かしい気持ちになった。
「ねぇ。西野さん」
「なに」
話しかけてきたのは、隣の席の青井岳だ。
とてもニコニコしていた。
「西野さんって何部に入るの?」
「なんにも入らないよ」
「俺ね!サッカー部に入る。サッカー選手になりたいんだ。」
と岳は輝いた目で話していた。私はなにも反応ができなかった。夢も希望もなかったから。
ただ、毎日を平凡に生きてきただけ。そんな輝いたものなど私は持っていなかった。
お昼休みになった。
「ココ!久しぶり!」
そう話しかけてきたのは私の幼馴染みであり、親友でもある菅野莉恋。
「よう。ココ!元気だったか?」
こっちは幼馴染みの村岡玲。厄介なやつ。
でも、相談に乗ってくれるときはいいやつだ。なんだかんだ優しい。
私は昔からこの2人以外に友達がいなかった。
それは無表情だから。一緒にいてもつまらないから。そして、病気だから。でも、この2人は昔からずっと一緒にいてくれる。私が会話に混ざらなくても、笑わなくても。私を一番に理解してくれている。だから、心地よいし、気を使わなくていいから好き。私の病気を知っても私への態度が変わらなかった2人は私の宝物。
「なぁ、腹減った。飯食おうぜ」
「そうだね。食べよう。心愛お弁当持ってきた?」
「うん。あるよ。」
「俺さ、サッカー部に入る!」
「いきなり何よ。あんたはサッカー以外に何も取り柄ないでしょ」
中学校の頃も3人でつるんでた。お弁当も。登下校も。
莉恋と玲は喋っている役。私は聞いてる役。
自然にそういう構成になっていたが、私はそれが一番いい。
「お前は何に入るんだよ」
「私はサッカー部のマネージャよ!」
「また、お前と一緒かよー。勘弁勘弁!」
「もう、今日はココと二人で帰る!」
「え、ひど!すいませんでしたー!チョコ上げるから!」
キーンコーンカーンコーン
「じゃ、ばいばい。二人とも頑張ってね」
「おう!」
「ありがとう!気をつけてね。一緒に帰れなくてごめんね。」
2人はもう、部活が始まるようだった。久しぶりに家に帰る。何ヶ月ぶりかな。きっと両親はいないだろう。
外は桜がひらひら舞っていた。
ガチャ。
「ただいま」
「あら、おかえり」
母がいた。母なんて呼びたくない。私が嫌いな人。玲子さん。
「夕ご飯作っておいたから温めて食べてね。」
「うん」
玲子さんは私の二人目の母親。本当の母親は病気でなくなってしまった。亡くなったあと、浮気相手だった玲子さんを家に連れてきた。
玲子さんにとって、私は邪魔な存在。
私も玲子さんの愛情など求めていなかった。
私は小学校2年生の時、母が病気で倒れた。
ガンだった。父は私が小学校に入ったばかりの頃に浮気をしていたらしい。家には全然帰ってこず、お金も玲子さんのために使っていた。だから、母は私のために働いてくれていた。病気はもう手遅れで母は私に
「自分を信じていきなさい。誰かを愛しなさい。」
そう、私に言い残し亡くなった。
私はこの意味がまだ、わからない。いつか分かるかな。
父と玲子さんは毎晩のように出かける。
昼間は仕事、夜は出掛けていった。
父は私に必要なものは与えてくれていたから、何不自由なく暮らせていた。診察代も。
私の病気の治療法はまだない。
今日もカレー。玲子さんはこれしか作らない。というか、作れない。
カレーを食べる気分じゃあないからもう寝ようかな。