ガード
「まじ・・・?」

肝心な時に限ってこれまた傘がない。

しょうがなく近くの屋根付きバス停に駆け込む。

(まいったなあどうしよう・・・コンビニでお金はほとんど使いきっちゃったし・・)

取り合えず雨が止むまでここで待機だ、と思ったその時だった。


「もしもし父さん。僕です。はい・・はい。今から帰ります。じゃあ。」

淡々と言い終えた彼は、電話を切って始めた私に気づいたかのように顔を上げた。

「座られますか?」

ベンチのことだろう。

私が立っているのを見て不思議に思ったのか。

「いえ、大丈夫です。雨が止んだらすぐ出ますから。ありがとうございます。」

彼は、「そうですか」とほほ笑んで言うとベンチに座り、カバンをゴソゴソやりだした。

そして一本の折り畳み傘を私の前に差し出したのである。

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