ガード
***


私には愛してやまないものが1つある。

古着だ。

孤児院にいたころ、初めてシスターから自分の古着を買ってもらった高揚感は今でも忘れられない。

新品の服だったら絶対にあんな気持ちにはならないだろう。

古着というのは以前着用していた人からの継承品であるという。

沢山の思い出が詰まったその服を、何らかの縁があって、私が着られるというのは素晴らしいことだ。

だから、てっきり今日も古着屋に行って服を買うものだと思っていた。

しかし、私たちの乗る車が到着した場所。

そこはだ。

「なんで銀座・・・。」

もはや驚くこともできず、落胆して翔に泣きついた。

「ねえ、私、古着でいい。古着がいい。セカンドハンドで十分。」

「駄目。」 

「駄目だ。」

「駄目です。」

翔、あずさに続き、古川さんまで古着禁止令を発令したのである。
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