ガード
***

早い。

デパートに来て、ハイブランドの店を回るというのだから、いつかは言うだろうと思っていたが、これは早すぎる。

「全部ください」発言をした2人は涼しい顔をして立っているが、今の私にそんな余裕はない。

「どういうこと?全部?」

「ああ。」

「そうだ。」

まるで双子のように息の合う2人である。

「私、足は2本なんですけど。」

やりあいながらも時は流れる。

男どもがお買い上げの25足の靴は会計へと回された。

「このたびもありがとうございます、水浦様。お会計、こちらでございます。」

「はい。」

なんともきれいな笑みを浮かべてカードで一括払いする翔ではあるが、実際は目玉が飛び出る値段である。

水浦翔が本物のセレブだと再実感した瞬間だった。


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