ガード
頭の先からつま先まで、すべての寸法を測られ、やっと解放された時には翔はすでに会計を済ませていた。

「ねえ、どんなのにしたの?」

案外楽しみにしている自分に腹が立つ。

「秘密。」

翔が笑って言った。

「だってパーティーまでもう1か月しかないんだよ。」

「秘密。あずさ、どんなのにしたんだ?」

確実に話をそらされたが、まあよしとしよう。

「俺は、もう普通のフォーマルスーツ。」

***

そんなことを話しながら店を出て、銀座を出たころにはとっくに日が暮れていた。

古川さんに荷物を持たせたままというのもあるし、暗くなってきたしで足早にパナメーラに乗り込む。

*****


車が出発して十分。

夏の生暖かい風を全身で受けていると睡魔が襲うのも当然だろう。

船をこぎだしたのは、ほかでもない、私自身である。

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