不釣合い。

変わり始め

休み明けの出勤。

重い体を叩き起こし会社へと向かう。

『おはようございます』

また平凡な日々の始まりだ。

私はデスクに向かい今日の準備を始めた。

『桜おはよ〜。早いね〜。この前はありがとね』

『木村さんおはようございます。こちらこそありがとうございました』

『今日も元気に頑張ろうね。ふふっ』

なんか今日の木村さん機嫌がよくて逆に怖い。

さぁ仕事。仕事。

今日までの書類ちゃっちゃと終わらせて、週初めだし早く帰ろ〜。

撮りためてるドラマも見たいし。

この前買った新作の本も読みたいし。

私は黙々と目の前の書類を片付けていった。

うーん。順調順調。

いつも以上に作業がはかどった。

もうちょっとでお昼だ

今日は天気もいいし、気温もちょうどいいから屋上で食べようかな。

そんな事を考えてた時だった。

『お疲れ様で〜す。営業課の長谷川です。木村さんいらっしゃいます?』

その声を聞き、少しドキッとした。

周りの女子社員もそわそわしている。

『ねぇねぇ営業課の長谷川さんだ!今日もカッコいい』

『あ〜長谷川さんになら抱かれてもいい』

女子社員がコソコソ話をしている。

私は気づかないフリをして机で作業をしているフリをした。

『あっ長谷川さんこっち見た』

『きゃー目があった』

などと女子社員がキャッキャしている。

私も少し気になり、こそっと顔を上げてみると

遠くの長谷川さんとバッチリ目があってしまった。

とっさに目を背けてしまったが、それは悪いと思い、目を見て軽く会釈をした。

それを見て長谷川さんは軽く笑った。

『今長谷川さんこっち見て笑ったよ』

『えーヤバイ。私妊娠したかも』

若手の女子社員は女子校みたいなノリの会話を私のデスクの後ろでしている。

気にしないようにと思っているがどうしても少し気になり、またコソッと顔を上げた。

真剣な表情で何やら木村さんと話をしていた。

真剣な顔はやっぱりかっこいい。

ダメダメ!実物はチャラい男なんだから!

私は硬派な男がいい!

少し惚れそうなところをなんとか踏みとどまった。

5分10分くらい木村さんと話し込んで長谷川さんは颯爽と帰って行った。

『やっぱ長谷川さんかっこいいね〜』

『仕事とできてイケメンで言う事ないよね』

『山口さんもそう思いません?』

突然若手女子社員達に話を振られてびっくりした。

『そうだね。かっこいよね』

私は無難に受け答えした。

あなた達長谷川さんの実際の姿知ったらびっくりするでしょうね。

あなた達の知らない長谷川さんを私は知ってるんだから。

なんて少しバカな優越感に浸っていたその時だった。

『山口さんちょっといい?』

木村さんが私のデスクに近づいてきて声を掛けてきた。

『はい。なんでしょうか?』

『営業課がこの書類急ぎみたいらしいのよ。私が頼まれたんだけど、先にしなきゃいけない書類があって間に合わなさそうなの。申し訳無いけど作り上げて課長の印鑑貰って営業課の長谷川君まで持ってってくれない?』

『えっ私がですか??』

『そう。長谷川君が私ができないなら迅速かつ正確にできる人に代わってくださいって。あなたなら任せられるわ。』

『わかりました。すぐやります。』

『1時までに持ってきて欲しいらしいからよろしくね。お昼ずれちゃうけどごめんね。』

『いえ、それは大丈夫です』

私は急いで受け取った書類にかかった。
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