お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


少し前から、私からちょっと離れた場所にある椅子に座って休憩していたみっくん。


……のはずなのにいつの間にかすぐ隣にいて。

そんなみっくんはお箸を持っていて、その先にはかじりかけのピーマン。




………勘だけど。

間違いないと思う。




「……それって、私のピーマン…?」




確信を持ちながらおずおずと尋ねると、みっくんはバツの悪そうな表情(カオ)をした。



………図星!




「みっくん、あ「別に」




ありがとう、と言おうとしたのに、言い終える前にみっくんが言葉を重ねてきた。




「おまえのためじゃねーし。自分のことを嫌ってるヤツに食われるピーマンが可哀想だっただけ」




冷たくて、素っ気なくて、

ブラックコーヒーみたいな態度はいつも通りの通常運転。



だけど、わかるよ。

私にはわかるよ。




みっくんは、『自意識過剰』って言って鼻で笑うかもしれないけど。





………私のため、だよね。





だって、みっくん嫌というほど知ってるもんね。

私が苦いものが食べられないことなんて。

……ピーマンも昔から相変わらず食べられない。




だけど、代わりに私も知ってるよ。



みっくんが、ウソをつくとき視線を逸らすクセがあるってことくらい。





『おまえのためじゃねーし』



みっくん、今視線逸らしたでしょ。




私をごまかそうなんて100年早いよ。

……バレバレなんだからね?




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