お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
心の中でみっくんにそう言って。
それから、みっくんに思考を巡らせた。
────みっくんって、すごくずるい。
『嫌い』
私にそう言うとき、みっくんはいつだって真っ直ぐに私を見据えてくるから、みっくんは私のことを本気で嫌ってるんだと思う。
………だけどそんな私にさえも、みっくんはいざという時に優しい。
パーカーを貸してくれたり。
ピーマンを食べてくれたり。
昔とは比べ物にならないくらい素っ気ないのに、優しいところはまるで変わらない。
本当にずるいよ。
みっくんは簡単に私を嫌いになったのに、私にはみっくんを嫌いにさせてはくれないなんて。
会話は終わりだ、と言わんばかりにそっぽを向いたみっくんの横顔を見上げる。
私が見上げたからといって、もちろん、こっちを振り向いてくれることはないけれど。
かじりかけのピーマンが頭をよぎる。
それから、後を追うようにして、今着ているネイビーのパーカーも。
きゅ、と胸の奥が甘く甘く疼いた。
………なんだろうこの感覚。
でも、やっぱり。
“好き”
“大好き”
……って結局はそこに行き着いてしまう。
………浅野くんに優しくしてもらったときは、こんな気持ちにはならなかったなぁ、なんてふとそんなことを考えた。
たしかに、嬉しかったし、浅野くんのことも好きだけど。
こんな風に胸がきゅうってなることはなかった。
…幼なじみだから、特別なのかな。
そう勝手に結論づけて、みっくんのおかげで空になったお皿を片付けるためにその場を一旦離れた。