お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

毒づきながら軽く睨むと、当のひまりは嬉しそうにふにゃりと頬を緩めて。

………ほんっと、おめでたいヤツ。



『で?』


『んん?』



きょとん、と俺を見上げるひまりにため息をついた。




『だから、どこから行くんだっつってんの』


『え……あ!そう!わたあめ!』




ぱああ、と満面の笑みになったひまりをその場に置いて、俺はスタスタと歩き始めた。



『ちょっ……みっくん待って!』



咄嗟に俺の服の裾をつかんだひまりを振り返って、



『さっきの仕返し』



んべ、と舌を出してやった。




*




『ねぇねぇ、いつもの場所でいいよね?』



右手にはわたあめ、左手にはりんご飴。

どうやらベビーカステラは諦めたらしいけど。

とりあえず早く食えよ、甘い匂いが鬱陶しい………なんて思いながら答える。




『そこでいいだろ』


『了解!あそこ綺麗に見えるもんねっ』




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