お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
何を隠そう、浴衣を着てお祭りに来るのは初めてで、すごくウキウキする。
「あっ、そーだっ!」
大切なことを思い出して、カバンの中から、ごそごそと取り出したものは。
「夏奈ちゃんっ、この前はお誕生日おめでとう!」
お店でラッピングしてもらった、ピンク色の包み。
それを、夏奈ちゃんにプレゼントする。
夏生まれの夏奈ちゃんの誕生日は、一週間ほど前だったの。
お盆でおばあちゃんの家に帰省中だった私は、当日は電話越しでしかお祝いできなくて。
だから、今日、準備していたプレゼントを持ってきたんだ。
「えっ、なに、めっちゃ嬉しい!!開けていい?」
「うん!」
驚きを隠せない様子で、包み紙を開ける夏奈ちゃん。
中から現れたのは、ピーチピンクのリップと可愛いケースに入った同じ色のチーク。
「これ私に?! 豪華すぎない?!」
目を丸くする夏奈ちゃん。
豪華って………そんな凄いものじゃないよ。
私のお気に入りの、プチプラで可愛い学生向けのコスメブランドのもので。
夏奈ちゃんに似合いそうだなぁって思ったんだ。
………ということを伝えると、
「大切に使う!ありがと、ひまり!」
「ううん、こちらこそいつもありがとうね?」
感謝したりないのは私の方なのに。
……でも、プレゼント喜んでくれて良かったなぁ。
何だか満たされた気持ちに浸っていると。