お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
打ち上げ花火は、20時から。
それは、昔からずっと変わらない。
「じゃあ、そろそろ買うもの買っとかなきゃね、」
もう一度、ケータイで時刻を確認した夏奈ちゃんがそう言う。
6時半に待ち合わせだったんだけど、プレゼント渡したり、なんやかんやしている間に、もうすぐ7時。
たしかに、そろそろ見て回らないと花火に間に合わないかも。
「じゃあ、私が案内するね!」
手を挙げながらそう言うと、
「じゃあ、任せた」
くすっと笑う夏奈ちゃんが頷いてくれて、私たちはやっと提灯が燈る方へ歩き始めた。
*
頭にはうさぎのお面、左手には念願のベビーカステラの紙袋、右手にはこれまた念願のチョコバナナ。
すっかりお祭りモード。
見て見て! このお面。
愛くるしい顔をした、白いうさぎさんのお面は夏奈ちゃんが買ってくれた。
すっごく可愛くてお気に入りになっちゃった。
それから夏奈ちゃんの頭上には、クマさんのお面が。
これは、私が買ったもの。
“ふたりでお互いに買いっこしよう” っていうことで、お互いのお面を選んだんだ。
クリクリのおめめのクマさんは、夏奈ちゃんっぽいなって思ったの。
だって、夏奈ちゃんって瞳がとっても大きくて可愛いから。
そんな夏奈ちゃんは私の隣で焼きそばを食している。
ソースのいい香りがするけれど、ピーマンが入ってるのを見つけちゃったからなぁ。
食べたいなぁとは思わない。