お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「うわっ、結構時間経ってた……!」



焼きそばを食べ終えた夏奈ちゃんが声を上げた。



「今どれくらいなの?」

「7時40分!あと20分だね〜」


「えっ」


あ、あと20分?!


ど、どーしよ……



「どうしたの、ひまり、顔面蒼白だけど?!」



いきなり焦り出した私に、夏奈ちゃんが心配そうにする。



これは、花岡ひまり、一大ピンチだ。




「ど、どーしよ夏奈ちゃんっ!」


「なになに、とりあえず落ち着いて話して?」


夏奈ちゃんに宥められながら話す。



「まだ、わたあめとかき氷……!食べてないのに!あと20分じゃ二つも買いに行けないよ〜〜〜っ」



半泣きになりながら。

だって、今日は絶対食べてやるって心に決めてたのに。



だからって、花火はちゃんと特等席に座って見たい。




「なんだ、そんなこと?」


拍子抜けしたように間の抜けた夏奈ちゃんの反応。



「“そんなこと” じゃないよ………!!」


「もっと深刻な何かかと思ったわ」



し、深刻な問題だよこれは!!




………でも、これは諦めた方がいいよね。

私の食欲のために、夏奈ちゃんを振り回すなんて勝手なことはできないし……。



ガックリ、と肩を落としていると。



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