お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「い……っ」
「い?」
反射的に “いつものとこ!”
と答えそうになって。
慌てて言い直す。
「えっと、近くにちっちゃな神社があるんだけどね、そこの石段の真ん中の辺りがベストポジションなの!」
そっか……。
“いつものところ” で通じるのは、みっくんだけ。
みっくんとは、何回あそこで花火を見たんだろう……。
みっくんが隣にいた夏祭りを思い出して、頬が緩んだ。
楽しかったなぁ。
なんやかんや、みっくんはいつも私に合わせてくれるし。
なんやかんや、毎年恒例になってたよね。
………もう、行けないのかな。
ううん、今年はダメだったけど、来年こそは!
そして、来年は、みっくんにも浴衣を着せて、私も浴衣を着よう。
きっと、さぞかし似合うんだろうな。
みっくんはなんでも着こなしてしまうから。
ふたりで浴衣を着てお祭りを回る様子を思い浮かべる。
………あれ、それってなんだか少女マンガのテッパンの浴衣デートみたい……?
心臓がドキンッと跳ねる。
柄でもないことを想像して、一人頬を熱くしていると、夏奈ちゃんが顔を覗き込んできた。