お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
何のしかけもない短距離走は、足の速い子に出てもらうべきだし、妥当かなって。
「え、そうなんだ?ひまりはてっきり、パン食い競走だとばかり……パン好きでしょ?」
「好きだけどっ!」
しかもパン食い競争に使われるパンって8割ぐらい、甘い菓子パンだし。
もちろんのこと、大好物。
「じゃあ、なんで?」
痛いところを突かれて、口ごもりながら説明する。
「なんでって………身長が足りないからに決まってるよ……」
「………ぷはっ」
吹き出した夏奈ちゃんに、私はむっと唇を尖らせた。
これは切実な問題なんだからね!?
夏奈ちゃんには到底無縁だと思うけど!
「そういう夏奈ちゃんは何に出るの?」
「えっとね、短距離走一種目と、リレー系どれかに出れたらなーって考えてる」
「さっすが…」
格が違いすぎて感嘆のため息しか出ない。
「まぁ、お互いやりたい種目に出れたらいいね!」
夏奈ちゃんがそう言って、
「うん!」
私は大きく頷いた。