お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

それはそれは、冷たい声で。

そんな、浅野くんの珍しい姿に怯えてひるんだ隙に、思わず私は声に出していた。



「みっくん……の、こと」



「……みっくん?」




浅野くんが冷たい声を緩めて、きょとんとした様子で私の言葉を繰り返す。



そこで、はっ、と気づいたときにはもう遅くて。




あちゃ────……。

言わないでおこうって決めていたのに、こんなにアッサリ口に出してしまうなんて。



そんな自分が不甲斐なくて、頭を抱えたくなった。




まぁでも……。



仕方ない、よね。

口に出してしまった以上引き返せないし!



みっくんのことを “好き” って思ってるってことだけは、秘密にしておこう。


それだけは、絶対に内緒。




───だったら、きっと問題ないよね?




よし、と覚悟を決めて、まだきょとんとしている浅野くんに、説明する。





「みっくんっていうのは………えっと、棚橋光希くんのことで……」


「光希?」




浅野くんがパッと反応する。


そっか、そういえば、バスケ繋がりで仲がいいって臨海のときに言ってたよね。



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