お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「まさか………?」
怪訝そうな顔をした浅野くんに焦って付け足す。
そうだ、ただの “幼なじみ” っていう設定だった。
「ま、まさか、普通だよ!」
「ふつう?」
「うん、普通っ」
“普通” を強調するように言うと、浅野くんの表情がほっとしたように緩んだ。
「そっか、よかった」
よかったって………なにが?
浅野くんの言うことは、たびたび私の理解の範疇(ハンチュウ)を超えてしまう。
「じゃあさ」
「?」
「俺のことも、名前で呼んでよ」
「ほぇ?」
浅野くんのことを、名前で……?
突然の提案にきょとんとする私に、
「だって光希のこと下の名前で呼んでるでしょ。だったら俺のことも……って、だめ?」
みっくんのことを、下の名前で呼んでいる……なんて言うけれど。
──確かに、“みっくん” は下の名前から取った呼び名。
だけど、私の中では、最初から “みっくん” として認識していたから。
みっくんが “光希” であることを知った方が遅くて、だから敢えて呼び方を気にしたことなんてなかった。
「別に駄目じゃないよ」
だからって浅野くんのお願いを断る理由もなく、なぜこんなことを頼まれているかはわからないけれど、頷いた。