お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*


……なんて意気込んでいたのはいいんだけどなぁ。


はぁ、とため息をついた。




「私、本当に大丈夫かな……」




フェンスに寄りかかると、自然と口からほろりと零れた独りごと。



今更、弱気になったって仕方ないのに。

もう前日なんだから、なんとしてでもやりきらなきゃいけないのに。





さっきまでの練習を思い返す。




ウォーミングアップの準備体操をしてからトラックで2回、通し練習をしたんだ。


なのに、2回とも私のせいで上手くいかなかった。




一回目は、受け取ったバトンを取り落としてしまって、二回目はバトンを渡す手を左右間違えてしまって。



みんな優しいから、何も言わずにドンマイって励ましてくれたけれど、十中八九足を引っ張ってしまっている。



私以外は、みんな運動部の子で足も速くて。



だから、私はせめて失敗だけはしないようにって思うのに…………私ってどうしてこんなに不器用なんだろう。





明日、失敗したらきっと私のせい。



ぜんぶ、私のせいなのに、




気を落としている私に気づいたのか、いつもより早く休憩時間を入れてくれたのも、申し訳なくて。




もう一度ため息をつきながら、いつものクセで何気なくフェンスの向こうに目をやった。




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