お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「聞いちゃ、だめ?」
下から、懇願するように問うと、
「………っ、ほんと、なんなの、おまえ…」
みっくんが苛立ったようにクシャリと自分の髪に触れた。
「俺は、おまえのこと嫌いだよ」
「………知ってるよ」
これほどまでに “嫌い” が胸に突き刺さったことはなかった。
好きな人に “嫌い” って言われることが
こんなに苦しいなんて。
「なのにさ、確信犯なの?」
「へ?」
「俺、昔から弱いんだよ──────おまえの泣き顔とか、“お願い” だとか」
吐き捨てるように言った言葉なのに、
「放っておけなくなる。だから嫌なんだ」
その響きの節々に、温かい優しさを感じる。
独り言のようなみっくんの言葉に、なにを返せばいいのかもわからず黙っていると、
はぁ、とみっくんがため息をつく音が聞こえた。
「………100m走と、男子リレー」
「っ!」
答えて、くれた………。
じわりと胸の奥のほうが温かくなる。