お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「…………なんかあった?」



ふ、と和らいだみっくんの口調。

あれ、この口調………って、



ひどく懐かしくて、
たしか、これは、中学生の頃と同じ口調だ。



高校生になってから、一度もこんなに優しい口調を聞いたことがない。




「なにもないよ」


「なにもないって声じゃない」




私は、スッと目を逸らせた。


なにもないよ。




………なんて、嘘だけど、だって、キラキラしているみっくんに、こんなこと知られたくない。


弱い自分なんて、見せたくないよ。




「リレー、不安?」




なのに、あんまり優しい声できくから、

涙腺がかすかに緩む。



「………」



それでもなにも言わない私に。



「 “ひまり” こっち見ろ」




………っ、そんなのってずるい。


一番、卑怯なタイミングで、名前なんか呼ぶのって反則だよ。



操られるがままに、みっくんの方に向き直る。




「………心配すんなよ。そんなに気負う必要ないって」



「だけど、私のせいで上手くいかなかったら………」



どうしようって。


リレー自体はもう、そんなに嫌じゃない。

だけど、せっかく一緒に頑張ってくれたみんなの足を引っ張りたくない。




< 169 / 387 >

この作品をシェア

pagetop