お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「…………なんかあった?」
ふ、と和らいだみっくんの口調。
あれ、この口調………って、
ひどく懐かしくて、
たしか、これは、中学生の頃と同じ口調だ。
高校生になってから、一度もこんなに優しい口調を聞いたことがない。
「なにもないよ」
「なにもないって声じゃない」
私は、スッと目を逸らせた。
なにもないよ。
………なんて、嘘だけど、だって、キラキラしているみっくんに、こんなこと知られたくない。
弱い自分なんて、見せたくないよ。
「リレー、不安?」
なのに、あんまり優しい声できくから、
涙腺がかすかに緩む。
「………」
それでもなにも言わない私に。
「 “ひまり” こっち見ろ」
………っ、そんなのってずるい。
一番、卑怯なタイミングで、名前なんか呼ぶのって反則だよ。
操られるがままに、みっくんの方に向き直る。
「………心配すんなよ。そんなに気負う必要ないって」
「だけど、私のせいで上手くいかなかったら………」
どうしようって。
リレー自体はもう、そんなに嫌じゃない。
だけど、せっかく一緒に頑張ってくれたみんなの足を引っ張りたくない。