お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
不安ばかりが先走る私を、落ち着けるのはいつだってみっくんの役目だった。
そう、今だって──────
「今まで練習頑張ってきたんだろ。
なら大丈夫だって。
練習は裏切らねーし、それに、
心配したって誰も文句言わねーよ」
「ほんと……?」
「ほんとだよ、」
みっくんの言葉ってなんで、
こんなに素直に入ってくるんだろう。
不安だった気持ちが、少し軽くなって溶けていく。
フェンスの隙間から、みっくんの指先が私の額を軽く小突いた。
「まぁ………頑張れば?」
「……っ」
「頑張れば、応援してやらないこともないけど」
なんて回りくどい言い方。
……ていうか、私のこと嫌いなわりに、応援なんてしてくれるの?
そんなの、
「頑張るっ!!」
頑張るしかなくなっちゃうじゃん。
そんな私に、みっくんが、ふ、と口元を緩めたように見えたのも一瞬。
「光希─────っ!練習するぞーっ!」
クラスメイトに呼ばれたみっくんは、私にはもう何も言わずに背中を向けて戻って行った。