お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*


行事の日は時間が経つのが早い。


あれよあれよという間に100m走が終わったらしく、気づけば入場してグラウンドの真ん中にいた。




「……なんだか、緊張してきた、かも?」




ぽつり、と思ったことを口にした。



元から人に注目されるのがニガテ。

だから、楽しいんだけれど、得意とか不得意の以前に緊張であがってしまう。




でも、楽しいんだよ?

だって、普段は人見知りな私だけど、これは競技だから割り切って知らない人でも話しかけに行けるんだもん。



そこが借り人競走の魅力だ。




なんて考える間にも、緊張がじわじわと侵食してきて。

せめて、頭が真っ白にならないように、ルールを頭の中で唱えた。



借り人競走のルールはいたって簡単。



《ピストルの音で、スタート。

そして、10mほど先にある箱からお題が書かれたカードをひく。

グラウンド周辺からそのお題に当てはまる人を見つけて、手を繋いで走ってゴール!》



といったベーシックなもの。




なんだけど、なぜか不安に襲われた私は、頭の中でそれを何回も反芻する。




そんな私の耳に、後ろに並んでいる他クラスの女の子の話し声が入ってきた。



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