お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「やばっ、もーすぐうちらの番じゃん!?」
「なに?あんたまさか緊張してんの?」
「や、それはない!……けどさ、先輩から聞いたんだけど、うちの学校の借り人競走ってさ……」
「あー、あるらしいね」
なにが………なんて、気になっちゃう。
「各学年につき1枚、“当たり” が」
「えっ!?」
えっ、と思わず素っ頓狂な声を上げたのは私。
慌てて口元を抑えて、何も無かったかのように振る舞った。
………とりあえず、盗み聞きしてごめんなさい。
それよりなにより、気になるのは会話の中に出てきた、“当たり” の存在。
そんなの今初めて聞いたよ!?
“当たり” の正体を探ろうとするも、ピストルが鳴ってスタートしたのは、私の一つ前の組。
うわっ、もう次私の番……?
仕方ない、謎の “当たり” の正体を突き止めるのは諦めて、目の前のことだけを考えよう。
考えすぎはよくないっていうし……!
うんうん、と自分を言い聞かせて、
自分の順番まで静かに待った。