お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*



やっぱり時間が経つのは早い。

ぼーっとしている間に、もうスタートラインに立っていた。





「位置について、よーい!」




パンッ



掛け声とともにピストルの音が頭上で弾けて、一斉に駆け出した。



私もなんとかスタートを切ったけれど。




うわっ……みんな速いっ!!


借り人競走、ちょっとナメてたかも。




自分が遅すぎるのか、他の子たちが速すぎるのか(たぶん前者)、




お題のカードのところに着いたのは私がぶっちぎりの最後で、もう残りの1枚きりだった。




というわけで、迷うこともなくカードを手に取る。



お題を確認しようと、カードをひっくり返して………





「………え………」






カードに書かれていた文字に目が釘付けになった私は、そのまま硬直する。



戸惑いを隠せない私の耳に、放送部の実況アナウンスが飛び込んできた。




〈─────おおっと!?

ここで、1年8組の花岡さんが 今年の “当たり” を引き当てたようです…!

さぁ、影ながら美少女と囁かれている彼女はいったい誰のもとに向かうのでしょうか────!!〉






理解力の乏しい私でも、すぐに理解した。


あぁ、女の子たちが言っていた “当たり” って──────これのことなのか…っ!!


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