お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「………っ、翔太くん!?」



「ひまりちゃん、行こ」



「へっ!?」




なぜか走ってきた翔太くんは、私の名前を呼ぶや否や私の右手を掴んだ。



思ったよりも熱く火照っている翔太くんの手のひらにドキリとした。




………のも、僅か一瞬で。




次の瞬間には、腕を引っ張られながら走り出していた。




「………っ、ちょ……っ!」


「ごめん、スピード上げるよ」




ぐいっと引っ張られるがままに足を動かすと、いつの間にか今まで感じたこともないスピードで走っていた。



風を切って走ってるって感じがする。




そうだ、たしか翔太くんってとっても足が速かったよね。


うちのクラスの男子リレーのアンカーも任されてたっけ………。




そんなめちゃめちゃに速い翔太くんの足の速さに、足がもつれそうになりながら着いていく。



………きっと、これでもスピードを抑えてくれているんだろうけど。





─── そして、あっという間にゴールテープがすぐ先に見える。


見えたと思ったら、なだれ込むようにゴールテープを切っていた。




その間、コンマ数秒。




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