お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
それより、もっと気になることはいっぱいあって。
「あの……」
「ごめん、俺と走るの嫌だったよな?」
私がなにも聞く前に、翔太くんがガバッと頭を下げる。
そんな翔太くんに、私は慌てて首を横に振った。
「謝らないでっ、あの、私、わかってるから!私のこと、助けてくれたんだよねっ?」
「え……」
なんで、翔太くんが私と走ってくれたのかなって考えたときに気づいたんだ。
おどおどする私を見ていられなくなって、翔太くんが助け舟を出してくれたのかなって。
ほら、翔太くんってすっごく優しいし!
「俺、そんなに良いヤツじゃないよ」
「……? でも、嬉しかったよ?」
なぜか暗い顔をした翔太くん。
そんな翔太くんに、私は首を傾げた。
おかしいなぁ、私、翔太くんのことを責めるつもりなんて全然ないのに。
「頭真っ白になっちゃった私のもとに駆けつけてくれた翔太くん、本物の騎士みたいでかっこよかったよ!」
あのとき、観客席から甲高い声が聞こえてきたのはきっと気のせいじゃないもん。