お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「借り人競走のお題、“好きな人”……だったから。たぶん、誤解されてると思うし、変なウワサが立つかも」
翔太くんの言葉に納得する。
たしかに、ウワサされてもおかしくない状況かも。
でも、それを言うなら…
「そんなの、翔太くんこそ………助けてくれたのに、私なんかとウワサされるなんて良い迷惑だよね!ごめんなさいっ」
「俺は別にいいけど」
「ほぇ?」
「俺はひまりちゃんとなら、ウワサされたって良いよ」
真っ直ぐに私の目を見て、
どこか試すような視線を注ぎ込んでくる翔太くん。
うん、これは、“謝らなくても大丈夫だよ” ってことでいいのかな。
翔太くんって心まで広いんだ。
優しいうえに心も広い、なんて翔太くんは菩薩だとしか言いようがない。
尊敬の眼差しを翔太くんに向けていると、彼は呆れたように笑った。
「なんか……また勘違いされてるみたいだけど、ま、いっか」
「?」
きょとん、とした私の頭の上に、ぽん、と翔太くんの手のひらが乗った。
「もし、俺が一緒に走ったこと “ありがとう” って思ってくれるなら…。男子リレー応援してくれたら嬉しいかも」
少しはにかみながらそう言った翔太くんに、私は大きく頷いた。