お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
そんな私の耳には、
「─────“みっくん” 、かぁ」
香音ちゃんが思案気に呟いた声は、風に溶けて届かなかった。
*
「ひまり、生きてる?」
「はっ!!うん、生きてるよ!」
しばらく呆然としていた私は、夏奈ちゃんに肩を叩かれてやっと我に返った。
「……ていうか、幼なじみって言っちゃってよかったの?」
夏奈ちゃんは眉を寄せるけど、
「“他の人に言わない” ってみっくんとの約束だけど、たぶん大丈夫かなって。
だって、香音ちゃんはみっくんの彼女さんなわけで………ずっと隠しておけるわけじゃないし!」
“香音ちゃんはみっくんの彼女さん” ────。
おかしいな。
自分で言った言葉に自分でヤキモチ妬いてる、なんて。
臨海のときに香音ちゃんが切なげに言っていた言葉の意味、今ならよくわかる。
〈みっくんのたった1人の 彼女(トクベツ) になりたい〉
……それは甘くて、苦しくて、わがままな気持ちで。
「あ、そういえば。香音が来る前、なにか言いかけてなかった?」