お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

「ひまりってさ、ちっちゃいし、色白だし、髪の毛も染めてないツヤツヤの黒髪セミロングだし、細いし……なんか純粋っぽいじゃん、見た目」

「うん……?」


ちっちゃいって言われると、なんだかフクザツな気持ちになるけど、貶されているわけではなさそう。


「で!見た目だけかと思ったら、中身までこんな純粋培養だったとは………。本当にいるんだなって思ったよ、“恋を知らない子” って」

「う……ん……?」


貶されているわけ、ではないんだよ、ね?

というか、恋を知らない……?
ってことは、逆に言えば……


「夏奈ちゃん、恋したことあるの?!」

夏奈ちゃんの肩を掴んで聞いた。

「うぉっ!いきなりなに、恋したことくらい……あるよ。中学のときだけど」

「ほんとっ?!」

心なしか、夏奈ちゃんの頬が赤く染まって見える。

でも、そんなことより、私には夏奈ちゃんがキラキラして見えた。




恋……かぁ。
それは、私にとってはドラマやマンガや小説の中のお話で。だから、大人のものとばかり思っていて。


自分が “するもの” だと思ったことなんてなかった。



それってどんな気持ちなんだろう。
恋をしたら、どんな世界になるんだろう。


……それを知っている夏奈ちゃんが、ちょっぴり羨ましい。

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