お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


でも、私は……。




「あーさーのっ、あーさーの!!」




クラスメイトが “浅野コール” を始めるなか、私はまるでスローモーションを見ているような気分で競り合うふたりを見つめていた。




ふたりを目で追う私の視界にも、ゴールテープが飛び込んできた。



ゴールまで、ほんとうに残り僅か。




まだ翔太くんがほんの少しみっくんの前に出ている。




堪らなくなって、ぎゅっと目を閉じた。



きっと、上手く行けば私たちのクラスが優勝で、それでいい──────




だけど、だけど、私は……






「─────っ、頑張ってっ!!」






気づけば、叫んだあとだった。




そして、視界の端でゴールテープがたなびく。
ふたつの影が、勢いよくテープを切った反動で。






辺りがざわめく。

なぜなら、あまりに僅差すぎてどちらが先にゴールしたのか、応援席からはわからなかったから。





私にもわからない。

咄嗟に発した “頑張って” は一体─────



翔太くんと、みっくん、どっちに向けたものだったんだろう。




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