お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「光希の話を聞いて思ったんだよ」
俺はゴクリと唾を呑んだ。
「なぁ、光希が苛立つ原因ってさ、 “ひまりちゃんが好きだから” じゃねーの?」
「は、」
予想もしていなかったことを真正面からぶつけられて、口がカラカラに渇いた。
「好きだから、ひまりちゃんと “ただの幼なじみ” であることにモヤモヤして苛立って。それを “嫌い” だと勘違いしてさ。で、今、浅野が接近して嫉妬で苛立ってる」
挑戦的に俺を見つめてくる利樹。
「違う?」
首を傾げた利樹への、
返答が思いつかない。
………だって、そんなこと1ミリも考えたことなんてなかったから。
「……っ、俺は、」
口を開きかけた俺を利樹は目で制して。
俺の肩をぽん、と叩いて言う。
「まー、胸に手でも当ててさ。一回ちゃんと考えてみれば?」
なんで、利樹なんかに言われなきゃなんねーの………と文句のひとつでも言ってやりたいけれど。
意に反して、俺の口からは何の言葉も出てこない。
利樹は、用は済んだ、とばかりにヒラヒラと手を振りながら教室へ戻っていく。
「後から後悔しても遅いんだからさ、」
その途中で利樹が呟いた声は、俺には聞こえなかった。
─────結局、飲み物を買うという最初の目的はすっかり頭から抜け落ちて、そのまま教室に戻ったのだった。