お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「光希の話を聞いて思ったんだよ」



俺はゴクリと唾を呑んだ。




「なぁ、光希が苛立つ原因ってさ、 “ひまりちゃんが好きだから” じゃねーの?」



「は、」




予想もしていなかったことを真正面からぶつけられて、口がカラカラに渇いた。





「好きだから、ひまりちゃんと “ただの幼なじみ” であることにモヤモヤして苛立って。それを “嫌い” だと勘違いしてさ。で、今、浅野が接近して嫉妬で苛立ってる」





挑戦的に俺を見つめてくる利樹。





「違う?」




首を傾げた利樹への、
返答が思いつかない。




………だって、そんなこと1ミリも考えたことなんてなかったから。





「……っ、俺は、」




口を開きかけた俺を利樹は目で制して。


俺の肩をぽん、と叩いて言う。





「まー、胸に手でも当ててさ。一回ちゃんと考えてみれば?」




なんで、利樹なんかに言われなきゃなんねーの………と文句のひとつでも言ってやりたいけれど。


意に反して、俺の口からは何の言葉も出てこない。




利樹は、用は済んだ、とばかりにヒラヒラと手を振りながら教室へ戻っていく。





「後から後悔しても遅いんだからさ、」




その途中で利樹が呟いた声は、俺には聞こえなかった。






─────結局、飲み物を買うという最初の目的はすっかり頭から抜け落ちて、そのまま教室に戻ったのだった。




< 238 / 387 >

この作品をシェア

pagetop