お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
ドキリ、と鳴った胸には気づかない振りをする。
「あのね、体育祭の日にみっくんがばんそうこうくれたでしょ?」
だからこれ、とひまりが差し出したのは。
「…………え、」
目が点になる。
本気でばかじゃねーの、コイツ。
「あのときは、ありがとう、みっくん」
柔らかい声が落ちてきて、
まずい、と思った。
ひまりが渡してきたのは、箱に入った15枚入りのばんそうこう。
本当に、ばかじゃねーの、と再度思う。
俺があげたのは、たった1枚だけだったのに。
箱に視線を落とせば、油性ペンで明らかにひまりの筆跡で、
“みっくん ありがとう!!”
なんて書かれていて。
「っ、」
───なぁ、なに可愛いことしてくれてるわけ?
誰にでもするわけ?
だよな、ひまりは浅野にだって、利樹にだって、きっと同じことをする。