お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
だから、おまえなんか、
嫌いだったのに。
「なんなの、おまえ」
掠れた声で、ぽつりと零せば。
ひまりは屈託のない笑顔を俺に向ける。
「みっくんのことが、だいすき、なんだよ」
「っ!」
あぁ、もう、
「………あ、え、えっと!お、幼なじみとして!ね!」
俺の完敗だ。
利樹にはしばらく顔向けできないな、これは。
認めたくなかった。
認めたくない。
─────認めたくないけれど、
どうやら俺は、
“幼なじみとして” と言われて不服な程には、
ひまりに惚れてしまっているらしい。
「俺、もう帰るけど」
「えっ!?そっか……じゃあ、またね?」
ばいばい、と小さく手を振ったひまりは。
自覚した瞬間に、
呆れるほどにかわいくて。
自分がどれほどまでに膨大な気持ちを隠してきたのかを思い知らされる。
それを利樹に先に指摘されたのは、やっぱりどうにも納得はいかないけれど。
はぁ、とため息をついて高い空を見上げた。
「俺が、ね……」
答えはあまりにも単純で、
今までどうして気づかなかったんだろうとため息をつく。
ひまりのことが、誰よりも、いちばん
好きで、大切だったっていうこと。
きっと、
もうずっと前から、その恋は始まっていたのに。