お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「まー、100歩?いや1000歩ぐらい譲って俺が小人でもいいとしてさ……なんっで、おまえは出演者じゃねーわけ!?」
きっ、と俺を睨みつける利樹。
そう、俺は舞台には乗らない裏方だ。
いわゆる大道具係ってやつ。
「別に、俺、そーいうの好きじゃないし……」
舞台の上で注目を集めるのは、
そんなに得意じゃない。
だから、なぜか俺を王子役に推薦してきたクラスメイトを断って、裏方に立候補したわけで。
「くっそ……俺がおまえだったら絶対に王子やってたのに……」
「残念だったな」
ばっさりと言い切ると、利樹はじとっとした視線を俺によこす。
すると、そんな俺のケータイの着信音が鳴った。
誰からかを確認して、タップして電話に出る。
そして、ひとことふたこと話して───
電話を切ったケータイを片手に持って、利樹に言った。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
「はいはい、また女泣かせの時間ですかー」
利樹の言葉に肩を竦めて教室を出た。
だって、あながち間違ってはいない。